『セルモーター分解・清掃』 KAWASAKIバリオスのメンテナンス


セルモーター分解・清掃



最近エンジンの始動性が悪い。加速はいまいちでアイドリングは不安定でエンストしそう。

17年間、24万km以上も無整備のセルモーターを分解、清掃してみる。

(2021年11月. 内容を補完し改訂しました。)





※ 整備はサービスマニュアルに頼らずやっているので参考程度にご覧ください。


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インデックス

1. バイク不調 (始動不良)

セルモーターを...
2. 外す
3. 分解する
4. 清掃、コミュテーター磨き
5. 点検する
6. 組み立てる
7. 復活!けっこう盲点?



1. バイク不調 (始動不良)


症状:
1. トルクの谷が強く、重ったるい
2. エンジンが温まると始動不良
3. アイドリング不安定1 (時々 弱々しい)
4. アイドリング不安定2 (時々 脈が飛ぶ)
5. セルの回りが時々よわく始動不良


 症状 1,2,3は今までの経験上ではガスが濃すぎるときの症状。 事実、スロージェットの番手を下げるとトルクの谷が消え、調子は上がった。しかし完全には解決せず症状 4,5 が新たに出現。  さらに薄くするためフロートの高さを思い切って1mmUP。再始動性はわずかに上がったようだがパワーダウン。

 始動が悪いと言っても押し掛けではさらっとエンジンが掛かるんだよな。って事は空燃比は無関係? スターターボタンを離した瞬間に掛かる事もあったから電気?

 なんか トルクの谷問題 と 始動性わるい問題 は原因がそれぞれ別のような気がするな…。 とりあえず空燃比は大丈夫そうなので一度もしっかりした整備をしてないセルモーターを点検する。



2. セルモーターを外す



 エンジン始動不良。  セルモーター外して点検する。



 セルモーターを外すにはエアクリーナーボックスを外す必要がある。
キャブホルダーのクランプを緩めエアクリボックスごと外すことができる。

関連:キャブレターの外し方




 セルモーターは赤枠の部分。ホースの下に隠れてる。

 ボルト2本を8mmのメガネレンチで外す。

 狭いからソケットレンチは無理。




 あとは車体右方向に引っ張れば外れる。

 オルタネータから引き抜き、モーター上部の突起は回してラジエーターホースとの接触を回避、 後は力技で抜き取るといった具合。 キャブホルダの負圧ホースを外すとよりスペースができる。




 まだ太いコードがスターターリレーに繋がっていてフリーではない。

 保護カバーを外して8mmのレンチでボルトを外せばコードを外せる。

 ドライバーだと舐めやすい。六角形になってるからレンチがベター。




 これで車体からセルモーターが外せました。これから分解。



3. 分解する



 セルモーターを分解して中を見てみよう。



 8mmのレンチで2本のボルトを外す。
 ボルト部分にはOリングがついてる。ボルトの根元に付けておこう。



 後はグイっと引っ張ってフタを外すだけ。
 部品多そうに見えるけど大別すると、上下のフタ (1,3)、 真ん中の本体 (2) の三つの部品に過ぎない。



 分解するとこんな感じで大まかに三つの部品になる。 ワッシャーやバネはなくさないように注意しよう。

 分解前に上のフタ(1) から 本体(2) にマジックで線を引いておくと組み立て時に合わせ位置が分かりやすい。 私は上面だけ黒塗装してるのでこれで分かる。



 さらに 本体を二つの部品に分解する。 磁力でくっ付いてるだけなので引っ張れば外せる。

 外側をステーター (固定子)、中の部品をアーマチュア (回転子) と言う。




4. 清掃、コミュテーター磨き



 17年、24万キロで初めての清掃だから内部は削れたカーボンブラシのカスだらけ。



 ステーター(固定子)、カスで酷い汚れ。 ここは水洗いして歯ブラシでゴシゴシ。



 下のフタ。カーボンブラシ周辺。ここもカスだらけ。
 ここは分解せずパーツクリーナーが良い。あまり分解すると半田づけし直すことになる。



 アーマチュア(回転子)のカーボンブラシの当たる部分をコミュテーター(整流子)と言う。 カスはこびりついたり、溝に溜まる。




 はい、カスを落としてキレイになりました!

 ちなみに分解すると半田づけが必要になるってのは右の矢印の部分ね。



 溝に残ったカス、研磨剤は安全ピンでこそぎ取り、

研磨してピカピカに…、って、実は、この「ピカピカ」がダメっ!






 ▽ 研磨は正しく




 マニュアルには、必要に応じて表面を滑らか、綺麗に、と書かれている程度だと思いますが奥が深く繊細な部品でした。


 餅は餅屋、こういった部品を製造しているメーカーのマニュアルの方が詳しい説明があります。
>参考元(外部): メルセン テクニカルガイド

 参考元の内容はボリューミー。バイクにおいては以下の2つを押さえれば十分でしょう。

▼ 押さえるべき要点: 整流子とブラシの接触について

 1. コミュテーター(整流子)とカーボンブラシがしっかり接触している事。
 カーボンブラシと整流子がしっかり接触していないと性能は十分に発揮されない。
 接触面に凹凸があると接触面積は小さくなる。接触面を平滑に整えよう。

 2. コミュテーター(整流子)とカーボンブラシに光沢は不要。
 それぞれの表面はピカピカ過ぎても、荒れ過ぎても強い摩擦が発生し性能を発揮できない。
 ブラシが引っ掛かって跳ねたりしないよう、表面、角をほどほどに整える



 改めてコミュテーター(整流子)を観察...

 隅が黒くくすんでいる。ここがブラシとうまく接触していないという事。

 研磨スポンジで綺麗にしてから観察してみてもこの部分が荒れていて接触していない事がうかがえます。



 では改めて接触面を整えます。

 磨くのではなく、”削って平滑に” することを意識。

 何番で仕上げるのが良いのだろう? とりあえず240番ならほどほどに削れ、ほどほどに整います。



 カーボンブラシの接触面もほどほどに荒らし、光沢を消して整えました。

 ちなみに新品のブラシに換える時もこのように、整流子に紙やすりを巻いて接触面をアーチ状に削ってから取り付けます。



 整流子の角が立っているとカーボンブラシが引っ掛かって跳ねてしまう。

 角はやすりで軽く擦って整えました。



 あとは仮組し、モーターを手回し。整流子の汚れ具合を確認し、ブラシが均一に当たっているようなら研磨は完了です。




5. 点検する



 マニュアルに沿って異常が無いかもチェックしました。



 コミュテーター(整流子)との接触で削れていくカーボンブラシ。 厚みをチェック。


〇 カーボンブラシの厚み
規定: 7mm
限界: 3.5mm

 計測すると6mm。24万kmオーバーでたった1mmの摩耗。全然減らないな。 短距離走行やアイドリングストップを繰り返してる車両は当然もっと早いペースで減る。






 コミュテーター(整流子)の径をチェック。 本格的な清掃の前に行ったので汚いです。


〇 コミュテーターの径
規定: 24mm
限界: 23mm

 計測すると24.2mm。アナログだから0.2mmは誤差だろう。 自分で削らない限りは減るもんじゃないんだな。




 コミュテーター(整流子)のセグメント間の抵抗値をテスターでチェック。 テスターのレンジは最小。


〇 セグメント間の抵抗値
(テスターレンジ最小)
異常: 高い抵抗値、読み取り不可∞

 マニュアルに任意の2つのセグメントって書いてあるけど2つだけでいいって事かな? 念のためいろんなセグメント間でチェック。確か10円玉でチェックするのと変わらない低い抵抗値を示したはず。正常でした。




 コミュテーター(整流子)のセグメントとシャフト間の抵抗値をテスターでチェック。 テスターのレンジは最大に。


〇 セグメントとシャフト間の抵抗値
(テスターレンジ最大)
異常: 読み取り値あり

 これで読み取り値があるとショートしてるってことになるらしい。 通電なし。正常でした。




 ターミナルと(+)ブラシ、本体と(-)ブラシ間の抵抗値をテスターでチェック。 テスターのレンジは最小。


〇 ターミナルと(+)ブラシ間の抵抗
〇 本体と(-)ブラシ間の抵抗
(テスターレンジ最小)
規定: 0オームに近い値

 2Ωぐらいでした。10円玉と同じぐらいの値なので異常なし。



 次いでターミナルと(-)ブラシ、ターミナルと本体間の抵抗値をテスターでチェック。 テスターのレンジは最大。


〇 ターミナルと(-)ブラシ間の抵抗
〇 ターミナルと本体間の抵抗
(テスターレンジ最大)
規定: 読み取り値なし

 読み取り値があるとショートしてる。通電なしでした。異常なし。




 点検の結果、全て異常なし!

 しかしマニュアル曰く、点検で異常が無くてもダメなもんはダメなんで交換... とのこと。




6. 組み立てる



 点検が終わり組み立て。コツがある。



 組み立て時に困るのがここ。

 バネで飛び出すカーボンブラシはクリップで押さえつけよう。

 写真ではワニぐちクリップを使用してます。これでアーマチュアを入れられる。




 組み立て時に失敗するのがここ。

 ステーターを通す時は、アーマチュア(赤矢印)を下に押さえつけて固定しながら。

 何も考えずにステーターを入れて行くとその磁力でアーマチュアが上に引っ張られて折角はめたブラシが外れるぞ。




 ステーターは凹凸の位置を合わせないとクルクル回ってしまう。 この時もアーマチュアを押さえながらステーターを少し持ち上げハメ直す。

 後はもう一方のフタを閉める。ここは自前の目印で位置合わせ。

 ボルトを締めたら組み立て完了!







7. 復活!けっこう盲点?

(汚れていたのでカーボン調シートを張ってリニューアル)



 スターターON、大きな音で勢いよく回るセルにちょっと驚き! こんだけ元気ならそりゃエンジン掛かるわ。


 20万km超ノーメンテのセルモーターでもそれなりにエンジン掛かっていたのでこれが始動不良の原因とは…、けっこう盲点?








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