バルブクリアランス調整 (2/3)
マニュアルによるとバルブクリアランスは12,000km毎にチェックすべきらしい。
実際は12,000km 程度で狂うことはないが、
問題が出る前に整えておくべき 重要箇所。
(このサイトではクリアランスをシムで調整するタイプについて説明します。)
□ バルブクリアランス調整の概要 | → バルブクリランスが狂ったときの症状、バルブクリアランスって何とか |
□ バルブクリアランス調整(1/3) | → 1.下準備~4.クリアランス計測まで |
■ バルブクリアランス調整(2/3) | → 5.シム取り外し~7.シム削って厚み調整まで |
□ バルブクリアランス調整(3/3) | → 8.組み直し、計測可否詳細 |
※ 整備はサービスマニュアルに頼らずやっているので参考程度にご覧ください。
5. シムを外す
カムシャフト → タペット → シムの順で外していく。
5-0. カムシャフトの位置 メモ
カムシャフト はバルブタイミングを決める部品なので 組む位置には決まりがあります。
マニュアルを持っていない場合はこの段階で位置を自己流でメモしておこう。
簡易的な位置決めの方法として、
1,4番を上死点にしてマークの下線を合わせる 方法(※1) もありますが、カムチェーンの伸び具合によっては1コマずれる危険が…。
(※1). 1,4番上死点でカムシャフトのIN側はINマーク、EX側はEXマークの下線をヘッドカバー合わせ面と水平になるように組む。
サービスマニュアルにあるような チェーンのリンク数で位置決めできれば確実です。
〇,×番上死点の時、目印から目印まで何リンクとメモ。これで正しく元通りに組めます。
(ZXR250のマニュアルでは1,4番上死点の時、IN下線からEX下線まで29リンク。)
5-1. カムチェーンテンショナーを外す
カムチェーンの張りを解放するためテンショナーを外します。 8mmレンチで。
関連: カムチェーンテンショナーの交換
5-2. カムシャフトキャップを外す
カムシャフトキャップ外します。 ボルトは16本、8mmのレンチで。
注意点、バルブスプリングの反発力があるので応力が集中するとネジ山が破損する可能性あり。
ボルトは、外側の物から内側の物へ と順番に。 全体を少しずつ緩めて カバーを徐々に浮かせて外すのが好ましい。
ボルトを締め付けるときは、バラバラ、てきと~じゃダメ。けっこうシビアに行う。(トルク値は次ページ)
もしトルクレンチやマニュアルを持っていない場合は、外す前にボルトの締め付けトルクを回転角でメモ。
1. 緩める前にボルトから接地面に懸けて印を付ける。んで緩める。
2. 手でボルトを締めて行く。
3. 着座した所(それ以上締まらない所)でストップ。印の角度がレンチで締め付ける角度。
5-3. カムシャフトを外す
フリーになったカムシャフトを外します。
カムシャフトは同じに見えて吸気側、排気側が決まっている。 分からなくなったら写真の溝をチェック。
(カムチェーンは下に落ちないように紐でも使って浮かせておいて。ま、落ちたら拾うだけさ。)
5-4. シムを外す
銀色の丸い奴がタペット。シムはこの下。
タペットを磁石で持ち上げて外す。
写真のように、シムが裏に引っ付いて一緒に取れることがほとんど。全てのタペット、シムを外します。
取り外したタペット、シムは何番のどこに入っていたか分かるようにしっかり管理!
6. シムの厚みを計測
マイクロメーターでシムの厚みを計測。
シムは長い時間手で持つと体温で膨張、計測値がおかしくなる。ピンセットを使って。
計測すると、「ん~、1.746...かな?」 みたいに、1/1000mm 部分まで気にしがちですがそこは四捨五入で。
シックネスゲージも1/100mm単位でしか計測できませんから、気にした所で1/1000mm単位の誤差は避けようがない。
計測したシムの厚みはこのようにしっかりメモ。
計測値、メモに間違いが無いか今一度チェック!
マイクロメーターは読み方が普通の定規とは違う。不慣れなうちは1箇所ぐらいはミスる。
7. シムを削って厚み調整
7-1. 目標とするシムの厚みを決定
まずは目標とするバルブクリアランス決める。
吸気側、排気側とも 規定内の任意の値で揃えます。
○ Baliusのバルブクリアランス規定値
吸気(IN): 0.15 ~ 0.24mm
・今回の目標クリアランス
EX: 0.25mm (規定の真ん中あたり。)
IN: 0.18mm (唯一規定内だった1番右のに揃えることに。)
あとは引き算で必要になるシムの厚みを導く。
7-2. 目標とするシムの厚みを算出
目標のクリアランス - 現状クリアランス = シムの削り量
今までのメモから算出するとこうなる。
必要となるシムの厚み
(シムの削り量)
1 | 2 | 3 | 4 | |||||
EX | 1.66 (0.08) | 1.68 (0.07) | 1.72 (0.07) | 1.72 (0.07) | 1.81 (0.08) | 1.79 (0.07) | 1.80 (0.07) | 1.78 (0.07) |
IN | 1.68 (0.11) | 1.71 (0) | 1.68 (0.08) | 1.63 (0.08) | 1.65 (0.08) | 1.75 (0.08) | 1.75 (0.08) | 1.66 (0.08) |
7-3. シムを削る工具を選択
シムは基本、必要な厚みを注文するものだが、削る事でも用意できる。
”素早く”、”水平に” 削りたいところだが2つは相反する。
● オイルストーン
ほとんど削れない。0.01mm削るのも苦労する。 比較的、水平に削れる。
● ダイヤモンドやすり (今回使用)
三角形のを使っていたが、平たいやつがオススメ。地面に置いてシムを押し付けてスリスリ。
集中すれば0.08mmぐらいまでならこれでいける。 わずかに偏って削れたり。
● ディスクグラインダー (今回使用)
結構削れる。 0.10mm以上の削りもこれなら早い。 偏って削れやすい。 コツが分かってないとおもいっきり失敗する。(詳しくは下で)
今回は削る量が多いし、早く終わらせたいので ディスクグラインダー にて挑戦。 仕上げ用にやすりも。
7-4. シムを削る (ディスクグラインダー使用)
■ 失敗
固定したシムにグラインダーを当てて削ってみました。
調子よく削れるぜーーー! と思っていたんだけどよく見たら すんごく斜めに…。 大失敗。
■ コツと注意点
上の写真の通り、グラインダーを固定して、シムを押し付ける方が良いね。 これなら削れ具合を確認、修正できます。
□ ディスク
なかなか良かったのはサンドペーパータイプの。 ダイソーにある#400や#240辺りが削りすぎないので調整しやすい。
□ 注意点
1. 削っている最中、プライヤーからシムが外れて飛んで行く事がしばしば。 失くさないように。
2. グラインダーで削るとシムは非常に熱くなる。 小さいから冷めるのも早いけど。
□ こんな感じで削った
1. まずはシムの角をなるべく均等に削っていく。ちょくちょく削れ具合を確認、修正しながら。
2. 削れていない中央部分を攻める。なるべく水平になるよう確認、修正しながら。
3. 一旦グラインダーを止め、 今度はダイヤモンドやすりでシムを削る、すると、削れている場所、いない場所 が見えてくるので、削りの甘い部分をまたグラインダーで修正。
4. 上の1~3を適宜に繰り返し、そろそろ良いかと思ったら熱膨張してるシムを冷まし、厚みを計測、やすりを使って修正、仕上げ。
□ 削り終えて
けっこう雑にやってしまったけど全てのシムの調整が完了! いくつかはジャンクエンジンから厚みの合うやつを部品取り。
グラインダーを使うと早いですが美しくは出来ません。 少し斜めに削れたり、角を面取りしたようになったり。 削り過ぎてしまうこともしばしば。
もっと効率的な工具、やり方がきっとあるはず。
次にシムを戻して組み直し。
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