『バルブクリアランス調整 (3/3)』 KAWASAKIバリオスのメンテナンス

バルブクリアランス調整 (3/3)


マニュアルによるとバルブクリアランスは12,000km毎にチェックすべきらしい。

実際は12,000km 程度で狂うことはないが、

問題が出る前に整えておくべき 重要箇所。


(このサイトではクリアランスをシムで調整するタイプについて説明します。)




バルブクリアランス調整の概要 → バルブクリランスが狂ったときの症状、バルブクリアランスって何とか

バルブクリアランス調整(1/3) → 1.下準備~4.クリアランス計測まで

バルブクリアランス調整(2/3) → 5.シム取り外し~7.シム削って厚み調整まで

バルブクリアランス調整(3/3) → 8.組み直し、計測可否詳細


※ 整備はサービスマニュアルに頼らずやっているので参考程度にご覧ください。


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8. 組み直し

8-1. シム、タペットを戻す


両方とも元あった場所に戻すだけ。 接触部にはオイル差しで注油

シムはリテーナーの上に置いて、タペットをその上に被せる。



8-2. カムシャフト位置決め


カムシャフトはバルブタイミングに関わるので正しい位置に組む。


1.  1,4番上死点に。

2.  カムシャフトは排気側から置く。
・EXの下線をヘッドカバー合わせ面と水平に。
・車体前方のカムチェーンに無駄なたるみが出ないようチェーンは引っ張りながら掛けること。

3.  カムシャフトの吸気側を置く。
・INの下線をヘッドカバー合わせ面と水平に。 カムチェーンを掛ける。
・カムチェーンが新品でもIN側の下線は多少傾くと思う。
・車体後方のカムチェーンのたるみはテンショナーが調整してくれる。気にしないでOK。



前のページで書いたとおり、スプロケの下線だけに頼るとカムチェーンが伸びている場合は水平にならず、掛け違いをしやすい。

予めメモった、またはマニュアルの目印から目印までの チェーンのリンク数で最終確認。

▽ ZXR250 リンク数

1,4番上死点の時、
IN下線からEX下線まで29リンク



8-3. カムシャフトキャップを締め付け


カムシャフトキャップを被せ、締め付けるんだけど、ここはちょっとシビアに


応力の集中は避ける。ボルト締め、内から外に。
スプリングによる応力が一点に集中するとヘッドのネジ山が破損する恐れがある。
まず軸受けに注油、バルブスプリングの反発力が一点に集中しないよう、キャップを締め付けるボルトは内から外へ、徐々に全体を締めて行く。



最悪、焼き付く。 締め付けトルク適正、均一に。
軸と軸受けはオイルをまとう適切なクリアランスがあって機能します。きつく締めすぎると油膜が薄くなって焼き付くことも。そこまで行かなくても回りが渋くなります。

▽ ZXR250 カムシャフトキャップ 締め付けトルク

5.9N・m (6.0kg・m)


締め付けは回転角って方法もあります。
マニュアルを手に入れる前はバラす前にボルトに印を付けて着座してからの締め付け角度をメモして締め付けてました。大体90°で。



・いい加減にやると...
暴れるカムシャフト、ハンドル異常にバイブ。それが手の骨に響いてむずがゆくって走ってられない。

締め付け具合はくれぐれも均一に。



8-4. カムチェーンテンショナー取り付け


カムチェーンテンショナーを取り付ける。

これでたるんでたカムチェーンが張る。念のため再び、カムチェーンのリンク数を数えてカムシャフトの位置に間違いが無いか確認しておこう。

注意. テンショナーを付けてない状態でクランクは回さない。
バルブスプリングの反力でカムシャフトが素早く回ったときにチェーンがたるんでいるので空回り、せっかく決めた位置が1コマずれたりする事がまれにあります。


関連:カムチェーンテンショナーの交換



8-5. 確認のためクリアランス再計測


クリアランスが正しい値になっているか再びシックネスゲージで計測。


 1234
EX 0.250.250.250.250.250.250.250.25
IN 0.200.180.200.200.200.200.200.20

EXは狙い通りの全て0.25mm。
INは0.18mmを狙ったのにノータッチの1番右以外は0.20mmに。

それでも規定値内だし、概ね揃っているから合格点だろう。



8-6. あとは適当に元どおりに組んで完了


あとはヘッドカバーを被せてボルトを適度に締める。 プラグキャップを差し込む、右側エンジンカバーの窓閉め、 ラジエーター、 キャブレターも戻す。 冷却水も入れる。

以上でバルブクリアランス調整 完了!


クリアランスの狂いで不調が出ていた車両なら、調整後は別のバイクに乗っているかのような劇的な違いに感動を覚えるはず!


関連:ラジエーターの外し方、 キャブレターの外し方



おまけ: エンジンの4工程とクリアランス計測可否の詳細



○ エンジンの各工程とバルブクリアランス計測の可否

(排) 排気
→ 排気の終盤からすでに吸気バルブが開き始めます(バルブのオーバーラップ)。 両方のバルブが開くので計測不可。

(吸) 吸気
→ ピストンが下がりきって吸気したところ。 まだ吸気バルブは開いているのでこちらは計測不可。

(圧) 圧縮
→ 吸気した混合気をギュッと圧縮したところ。 もちろん吸・排気バルブは閉じているのでどちらも計測可。

(燃) 燃焼
→ 混合気に火が付いて燃焼、ピストンが下がりきったところ。 次の排気のためにすでに排気バルブは開いているのでこちらは計測不可。


ちなみにピストン…
クランクピンを180°ずらして配置する一般的な4気筒のクランクでは、
上、下、下、上 のように『 両端 と 中央2つ 』それぞれペアになります。




上下するピストンの勢いが中央で打ち消し合い、振動が軽減されるって事なんですね~。



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