『腰上のオーバーホール (1/2)』 KAWASAKIバリオスのメンテナンス

腰上のオーバーホール (1/2)


走行 17万数千kmで初めての腰上OH。 22万数千kmで2度目のOH。

腰上ってのはクランクケース(腰下)より上、シリンダーヘッドやシリンダー、ピストンの事。

どのぐらいのタイミングでOHすべきかは距離では一概に言えないみたいだけど
本来は 走行 10万km程度でやるべき らしい。



腰上のオーバーホール(1/2) → バルブ外し、カーボン除去、バルブ擦り合わせ

腰上のオーバーホール(2/2) → バルブ組み付け、ガスケット交換、ピストンリング交換、シリンダーホーニング、エンジン始動・走った感想など

※ 整備はサービスマニュアルに頼らずやっているので参考程度にご覧ください。


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インデックス

0. 事前の作業
1. ヘッドから部品を外す
   1-1. バルブを外す
   1-2. バルブステムシールを外す
   1-3. スプリングシートを外す
2. カーボンを除去
   2-1. 洗浄剤に漬け込み
   2-2. ヘッド清掃
   2-3. ピストン清掃
   2-4. バルブ清掃
   2-5. ビフォーアフター
3. バルブすり合わせ
   3-0. 使用ツール
   3-1. すり合わせの作業
   3-2. シート面チェック
   3-3. 当たりが付いたかチェック



0. 事前の作業

シリンダーヘッドを外します。 詳しくはこちらで → シリンダーヘッドの外し方
シリンダー、ピストンも外します。 詳しくはこちらで → ピストン、シリンダーの着脱


1. ヘッドから部品を外す

1-1. バルブを外す


シリンダーヘッドを外したら、
タペット、シムは外してどこに入っていたか分かるようしっかり保管。


タペットを外すと見えるのがこの状態。
中央がバルブステムエンド(軸の終端)、その周りに2個のコッターとリテーナーでバルブは固定されている。


・バルブ外し方:
バルブスプリングに逆らいながら リテーナーを押し込み、コッターを外す。
これでバルブはフリーになり外せる。

・使用する工具:
リテーナーを押す工具が バルブスプリングコンプレッサー。
自作したものを使用したが出来が悪く苦戦。 既製品でも3000円程度なので購入したほうが良い。



では実際にバルブを外していきます。

バルブスプリングコンプレッサーを用いて、
燃焼室側でバルブヘッドを押さえつつ、リテーナーを押し込んでいく。


燃焼室側は合わせ面に傷を付けないよう注意!



ある程度リテーナーを押し込むと、コッターは力が抜けてフリーに。

ドライバー先端の磁力などを使って コッターを釣り上げて外します。

コッターはバルブ1本につき2つです。



コッターの外れたバルブはフリー。

バルブスプリングコンプレッサーを外して、バルブステムエンドを押せば燃焼室側から抜き取れる。

全16バルブを外します。  あ、リテーナーやバルブスプリングも外れます。



外したバルブ。

インテーク側はカーボンべったり…。
エキゾースト側は乾いているけどカーボンが焦げ付いてる感じ。



ここまでに外したタペット、シム、バルブなどは、

何番のどこに入っていたか分かるようにしっかり管理!




1-2. バルブステムシールを外す


燃焼室側にオイルが侵入しないようにバルブステム(バルブの軸)のオイル量をコントロールするゴム部品、

バルブステムシールを外します。



バルブステムシールプライヤーなる専用工具がありますが普通のペンチでもOK。

外す際にべりっと裂けたり、止め輪がぐにゃっと曲がったりしますが新品に交換するので関係なし。 再使用して問題が出ればOHはやり直し。ここは新品に交換。



1-3. スプリングシートを外す


バルブスプリングの直下に "スプリングシート" なるワッシャーが入ってます。

このシートはオイルで引っ付いてる分にはなかなか抜けたりしないけど、
洗浄の際にヘッドをひっくり返すといくつか抜け落ちます。
そうなると厄介、どこに入っていた物かパッと見では分からなくなる。

べつに外さなくても良い部品 だけど、外すなら強力マグネットなどで釣り上げて。



2. カーボンを除去

2-1. 洗浄剤に漬け込み


こびり付いたカーボンを『メタルクリーンα』 という洗浄剤で綺麗に。
容量13リットルの容器に10リットル分のお湯を入れ、洗浄剤の半分を溶かして漬け込み中。

ヘッド、バルブ、ピストンが入ってます。
シリンダーは入れない方が良い。 シリンダー内壁にまだらに錆が出ます。

このメタルクリーンα、劣化した塗装を侵します。 あとで耐熱塗料でヘッドはペイントしよう。




温度はくれぐれも使用方法どおりに。

熱すぎるとご覧のとおり溶けます。 まるでグレーのプラサフ噴いたみたい。
ぜひ100℃まで測れる温度計を用意してください。 200円ぐらいで買えます。



2-2. ヘッド清掃


メタルクリーン後、カーボンを落としていく前に注意点。

バルブシート (バルブとの当たり面)、ガイドの内壁 (バルブステムとの当たり面)、 ここは傷を付けないよう優しく。

バルブシートが傷付くと燃焼室の気密が保てなくなる。 ガイド内壁が磨り減ると隙間が大きくなってバルブがブレる。

割り箸とかナイロンブラシなら大丈夫。 金属ブラシはダメ!




排気ポートのカーボン、だいぶ軟らかくなっている。



ボロボロと剥がれ落ちる排気ポートのカーボン。

厚みを測ったらなんと1.5mm!



ゴシゴシしたけど バルブガイドの周囲にはまだカーボンがびっしり…。
このままでは気分が良くない。

ドライバーセットに入っていた尖ったやつをあてがい、かなづちで叩くと上手く削り取ることができました。


それと、
シリンダーとの合わせ面のガスケットのカスもオイルストーンで綺麗に。
かなり後になってやったので清掃が二度手間に…。



2-3. ピストン清掃


ピストン、シリンダー着脱のところで書きましたが、オイルリングあたりがカーボンやらでギトギト…。

オイルリング装着部分にある穴が全て塞がってました。

この穴はシリンダーから削ぎ落としたオイルを、ピストンの内側、ピストンピンの摺動部に逃がすためのものです。

これで煙を吐かずによく走れていたなぁ…。



穴に詰まったカーボンは硬くてかなり苦戦。

あとから分かったことですが φ1mmの精密ハンドドリルなどで掘り進めると楽です。

パーツクリーナーを穴に吹いて反対側の穴からプシャー!と綺麗に吹くのを確認したら完了。

ちなみにピストンの頭は汚れが落ちやすく、なんら苦労しません。



2-4. バルブ清掃


メタルクリーン後のバルブです。

吸気側は十分きれいになるんだけど、 排気側の焦げ付いたカーボンは落ちません。

当たり面は傷をつけないよう、焦げ付いたカーボンを(-)ドライバーで適当に削ぎ落として上の状態。

今になって思えばコンロの火で赤くなるまで熱すればカーボン焼き切れたか。


追記:ドリルに装着してサンドペーパー掛けるのが一番 簡単、綺麗に。バルブ鏡面化



2-5. ビフォーアフター



だいぶ綺麗になりました。 細かい部分は落ちきらないけど仕方ない。

メタルクリーンαには”防錆成分”が入っているけど、
次の作業まで時間を置くなら錆びそうな所には油を差そう。



3. バルブすり合わせ

すり合わせはバルブとシートとの密着性を高める作業。 圧縮に関わるところです。


3-0. 使用ツール


バルブラッパー(たこ棒)

これでバルブを掴む。 たこ棒は一番小さいサイズの吸盤しか使いません。



バルブコンパウンド

これを付けて擦り付ける。 基本、細い方だけ、しかもほんの少量しか使いません。



3-1. すり合わせの作業


まずはバルブにたこ棒をくっ付ける。

手順
1. ヘッドをひっくり返し、バルブをバルブガイドに挿入する。
2. たこ棒の吸盤、またはバルブヘッドにオイルを滴下。
3. バルブにたこ棒をギュっと押し込む。

これで写真のようにくっつきます。
カーボンが付着してざら付いてると上手く付きません。 その時は紙ヤスリでカーボンを落としてから。


バルブ、ヘッドのシート面をすり合わせる。

手順
1. バルブの当たり面にコンパウンドをちょんちょんと付ける。
2. バルブステムは潤滑のため注油。
3. バルブガイドにバルブを挿入し、ひとまずぐりぐり回してコンパウンドを馴染ませる。
4. その後バルブを持ち上げ、シートにカンッと叩きつけるときにクルッとたこ棒を回し、擦り付ける。

これを繰り返して当たりを付けて行く。 大体、1本あたり5分,10分くらいか?


注意点
バルブステム、バルブガイドは削ってはいけない。
砕けたコンパウンドが隙間に入り込んでくるので、ステムは時々綺麗にふき取り、ガイドはパーツクリーナーと注油を。



いったんバルブコンパウンドを綺麗にふき取りました。
すり合わせていくと右のように当たり面が銀色になってきます。



こちらは別の機会に実施したもの。
とあるバイク屋さんを真似て 最終仕上げとしてオイルを塗布してすり合わせ。

全体がぴかぴかしてるけどそこは置いといて、
当たり面が光って艶やかになりました。 でも光ったら良いってもんでもないな。



こちらヤフオクで入手したもの。

カーボンを噛みこむとバルブ、またはヘッドのシート側に凹みが出来てしまいます。

程度にもよるだろうけど、こうなると放熱や圧縮に問題が出てくるみたい。


粗めのコンパウンドで修正するとマシになるみたいだけど、
あまり削ってしまうのも良くないから 交換やシートカットが望ましい。

このバルブは使用せず。



3-2. シート面チェック

マニュアルを手に入れたのでヤフオクで入手したヘッドの摩耗具合をチェックする。
バルブの放熱や機密性に関わるけっこう大事な部分です。

○シート面の外側の径 規定値

Ex: 15.9~16.1mm
In: 18.1~18.3mm


本当はバルブの当たり面で計測するようだがヘッドで測っても一緒だろう。



○当たり面の広さ 規定値

Ex, In: 0.5~1.0mm



計測結果は...、う~ん、規定をごくわずかにオーバーしてる箇所もあるな。

オーバーしている場合はヘッドのシートカット。

シートカット自体はマニュアル通りにやれば良いんですがツールが無い。
ツールをちゃちゃっと自作してヘッドのシート面を削りました。 …大丈夫かな? いつかちゃんとやれたらまとめたい。



3-3. 当たりが付いたかチェック 方法2通り

パーツクリーナーでコンパウンドをしっかり洗い流し、当たりのチェック。


有名なのは光明丹(こうみょうたん)ですが、はんこの補充朱液で量的には十分です。

朱液をバルブフェイスに薄く塗って、シートに(回さず)カンッと打ち付ける

シート側に移った朱液がムラ無く綺麗な円になっていればOK。



矢印の辺りが若干かすれてるからまだダメだ。



灯油を満たして漏れないか確認する方法もあります。

スパークプラグを締め込み、バルブをガイドに入れ(スプリングなどは付けない)、灯油を注ぐ。

やってみたら漏れました。 すり合わせをやり直してまた挑戦、ありゃ、まだ漏れる…。

時間も無いので妥協。 あまり神経質にならなくても走ります。



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