『腰上のオーバーホール (2/2)』 KAWASAKIバリオスのメンテナンス

腰上のオーバーホール (2/2)


走行 17万数千kmで初めての腰上OH。 22万数千kmで2度目のOH。 2ページ目。



腰上のオーバーホール(1/2) → バルブ外し、カーボン除去、バルブ擦り合わせ

腰上のオーバーホール(2/2) → バルブ組み付け、ガスケット交換、ピストンリング交換、シリンダーホーニング、エンジン始動・走った感想など




※ 整備はサービスマニュアルに頼らずやっているので参考程度にご覧ください。


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インデックス

4. バルブを組み付け
   4-1. バルブステムシール装着
   4-1. バルブステム組み付け
5. ガスケット交換
6. ピストン リングの交換とチェック、修正
   6-1. ピストンリングの交換
   6-2. ピストンのチェック
   6-3. ピストンの傷 修正
7. シリンダー ホーニングとチェック
   7-1. シリンダーホーニング
   7-2. シリンダーの径をチェック
8. バルブクリアランス調整 と カムシャフトチェック
   8-1. バルブクリアランス調整
   8-2. カムシャフトのチェック
9. ヘッド装着、エンジン始動、走行
10. 中古ヘッドの注意点



4. バルブを組み付け

4-1. バルブステムシール装着


新品のバルブステムシール を用意。

オイルで潤滑してからはめ込みます。 6mmのソケットがサイズぴったり、これで押してはめ込みました。

シールは1個 300円ちょっとですが16個も用意すると5000円ぐらい。…何だか納得いかない。



ちゃんとはまったか良く確認!

写真は止め輪の口が少し広がってます。はまってるように見えて、上手くはまっていない状態



4-2. バルブ組み付け

出来の悪い自作バルブスプリングコンプレッサーでバルブを組み付けます。

バルブステムを潤滑、バルブをガイドに挿入、コッター以外の部品を元の場所に。 (スプリングはピッチの大きい方が上。)


バルブスプリングコンプレッサーでリテーナーを押し込んでいきます。

偏りのあるまま押し込むと2つのコッターは上手く入りません。

押し込んだときリテーナーがどうしても偏るので、スプリングの横にダンボールを噛ませて押し込んだときの偏りが相殺されるようしてクリア。



合わせ面は傷つけないようにダンボールを噛ませてます。



コッターに グリスをべたべた付けて、ピンセットでバルブステムの周囲に2つを置く。

上下さえ間違わななければ 結構てきとーに置いちゃって大丈夫。

あとはコンプレッサーを緩めていく。

上手くいくとしっかりはまり、スプリングが押さえられます。



「 2つのコッターの隙間が均一な方が応力が偏らず理想的 」らしいんだけど、あまり気にしなくても。

気になるならもう一度リテーナーを押し込んでコッターをちょっと動かしてやると上手くいきます。

私は全部均一にしたけど結局、走ってるうちにズレるんじゃないかな。



自作ツールで大苦戦。
午後9時から夢中になって、辺りがやけに静かだと思ったら午前3時!


時計見て一気に疲れが。 フラフラめまい…、寝よう…。

翌朝から作業、ようやく16本すべてを組み終えました!

自分で組んだバルブ、感慨が湧いてくる。



5. ガスケット交換


ヘッドカバーのガスケットを交換。

12年、17万キロ以上も使っていたものはカチカチに硬化してる。 もはやプラスチック。



ジャンクエンジンから部品取りしたものはグニャっと柔らかい。 これが普通。

ヘッドにシリコンガスケットを塗って装着。 薄めの塗布だと滲みやすい。ちょっと厚めに。



カムシャフトキャップの上と裏のガスケットを交換。

ここが劣化しているとプラグキャップがオイルでべたついて汚れたりする。



自作バルブスプリングコンプレッサーを使う際に邪魔になって外したここのガスケットはアルミ箔で自作。

ここは冷却経路、圧が掛かるので抜からずシリコンガスケットも併用。 結果、上手く行きました。



6. ピストン リングの交換とチェック、修正

6-1. ピストンリングの交換


ピストンリング、もちろん交換。 4つ注文で12,000円ぐらい。

外すときは上のトップリングから。 つまみ上げて、くるっと持ってくれば外れます。



追記:ピストンリングはマニュアルによると親指で合口を左右に開いて外すのが正解。



付けるときは下のオイルリングから。 基本外すときの逆の手順。

・一番上、TOPリング、その下、2ndリングには上下がある。『 R 』など文字の書かれた面を上に。
・合い口はそれぞれが重ならないようずらします。 一般的に120°ずらし。
・オイルリングはウェーブしていて終端どうしを重ねたくなりますが重ねない。


リングは付けるときに折ってしまう人もいるようですが、そんなに簡単には折れない。
製品がまともなら普通に(大切に) 扱えば問題ないです。


関連:怖いほど安い 中国製 AHLピストンリングを使ってみた



6-2. ピストンのチェック

下は少なくとも22万km走行したピストン。 マニュアルを入手したのでチェックしてみた。


○ピストンリングと溝のクリアランス

Top、2nd:
(規定) 0.03~0.07mm
(限界) 0.17mm


クリアランスはTop、2ndとも0.04~0.05ってとこです。
偏摩耗が無いかチェックするのでシックネスゲージを差したまま一周...、問題なし。

22万km以上走ってこの値だから減るもんじゃないな。


マニュアルどおりピストンの下から5mmの地点で径をチェックしてます。

○ピストン径

(規定) 48.960~48.975mm
(限界) 48.810mm


計測は48.950mmぐらい。 規定外だけど限界値まではまだまだ余裕がある。

規定を下回っても雑音が増えるくらいじゃないか?

これも22万km以上走ってこの値だからなかなか減るもんじゃない。



6-3. ピストンの傷 修正


ピストンの縦傷。 当たりが強かったためクロスハッチが消えてツルツルになった部分です。



縦傷を400番のペーパーで軽くこすり、クロスハッチを復活させてみました。

これでオイル保持できるかな?

(写真がクロスハッチに見えないのはたぶん作業途中だから。)



7. シリンダー ホーニングとチェック

7-1. シリンダーホーニング


シリンダー内壁にはオイルを保持するため、斜めに交差する傷(クロスハッチ)が入っています。

徐々に削れて薄くなったクロスハッチをホーニングで復活させます。

シリンダーにオイルをつけて800番の耐水ペーパーで「こんな感じで良いんか?」と不安になりながら斜めになぞりました。


後日談:
このシリンダーで5万km走行、トラブルは起きませんでした。
しかしシリンダーを外して確認するとホーニングの線はほとんど消えてツルツル。

ペーパーでやるなら もっと粗めの400番以下が良いかも。


関連:シリンダーのホーニング
  (ホーニングツールでやってみた。 #600や#800よりも深い線に。)



7-2. シリンダーの径をチェック (ピストンリングを用いて)


シリンダーの径を精密に測るならボアゲージ、
でもシリンダーの摩耗具合をチェックする程度ならピストンリングの合口で測れる。

新品、純正ピストンリングをピストンでシリンダーに水平に押し込み、合口をシックネスゲージで計測する。

○ピストンリング合口クリアランス

Top:
(規定) 0.10~0.25mm
(限界) 0.55mm
2nd:
(規定) 0.35~0.50mm
(限界) 0.80mm


新品のトップリング合い口は規定内の0.20mmでしたのでシリンダーはまだ大丈夫そう。
17万km以上走行したこのシリンダーもまだ薄っすら元のホーニング跡が残ってました。


関連:簡易式ボアゲージでシリンダー径は測定できるのか



8. バルブクリアランス調整 と カムシャフトチェック

8-1. バルブクリアランス調整


バルブクリアランスも調整。

クランクケースを下ろしているなら古いガスケットでヘッドを軽く組んで調整の作業を。


調整方法については以前まとめたのでこちらで → バルブクリアランス調整 (1/3)



8-2. カムシャフトのチェック


22万km以上使用したカムシャフト。 バルブの開度に関わるカム山の高さをチェック。

○カム山の高さ (ZXR250)

EX:
(規定) 27.73~27.87mm
(限界) 27.60mm
IN:
(規定) 28.43~28.57mm
(限界) 28.30mm

EX側、計測は27.75~27.77mmでした。
45psバリオスはZXRとEX側のカムシャフトは共通なので間違いなく規定内。

IN側、計測は27.79~27.81mm。
中低速重視のバリオスⅠ/ⅡはZXRとIN側のカムシャフトは共通でないから上の規定値は使えないだろうな…。

ま、簡単には減らないんだなと。



9. ヘッド装着、エンジン始動、走行

装着


諸々の作業、交換を終えて組み付け。

もともと劣化していた塗装はメタルクリーンでボロボロになったのでサイドの見える部分だけsoft99 耐熱ペイント(ブラック)で塗装。

もっと艶々なのかと思ったらマットな感じ…。 ま、良いか。


始動困難


エンジンなどを分解すると普段はガソリンがべたぁ~っと残るような場所も綺麗さっぱりしてしまう。
するといつもより薄くなってなかなかエンジンが掛からない。

キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル...地獄です。
でもそのうち『ボッ』と掛かりそうな気配がするはず。 そしたらあと少し。


17万kmOHの時はマニュアル、トルクレンチ無し、
22万kmOHの時は右側エンジンカバーから謎の異音がし出しましたが、結局は上手く掛かりました。

バイクと自分を信じてクランキングを続けてみて。



走った感想



17万km以上 走って初のOH後。 乗ってみたらほとんど別のバイク。

ぐんぐん加速、トルクがあってコーナーからの立ち上がりも非常に力強い!!



22万km以上 走って2度目のOH後。

前回のOHからまだ5万kmなのでどうかと思ったが、グゥーーンッと力強い加速感!!

バルブクリアランスの調整をちょっとサボっていたせいもあるか。



10. 中古ヘッドの注意点


中古のヘッドを購入する場合には大いに注意すべき点がある。

『 カムシャフトキャップ
シリンダーヘッド”対(つい)”で作られるから、別々に用意した物だとクリアランスに問題が出る。』

上の注意点を以前どこかで読んだ事があったのに 「バリオスには関係ないだろう」とキャップ無しの中古ヘッド購入したのが間違い。




対でないキャップをあてがったらクリアランスが狭すぎてカムシャフト回らない…。
整備を終えたヘッドを今さら捨てられないのでキャップ側を加工して乗り越えました。

まずは中古のカムシャフトキャップを買い漁り、なるべく相性の良い物を選ぶ。
キャップのボアをヤスリで削って拡大、組み付けて、外しての繰り返し…。

地味なのに神経つかう、時間も掛かる、楽しくもない作業…。

プラスチゲージで確認、すべて規定値内、差は0.025mmの範囲内に。 一応まずい振動もなく走ってます。


○カムシャフトジャーナル と カムシャフトキャップ クリアランス

(規定) 0.028~0.071mm
(限界) 0.160mm



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